第二章

20/58

170人が本棚に入れています
本棚に追加
/103ページ
「俺の本質って何だ!? どうせ替えの利く人形同然の俺に、本質なんてあるわけねえだろ!」 「でも、こうして泣いたり怒ったりするのは、お前自信の感情だろ? 誰から作られたものでもない、紛れもないお前だけの持つ感情だよ」  俺達よりも色素の薄い赤目が、涙に塗れて輝く。  頬に伝っていく滴を拭ってやると、ルーカスは俺の襟を掴んだまま、ぶら下がるようにして座り込んだ。 「お前が、俺から全部奪ったんだ。 お前がいなければ、団長は俺を捨てなかった・・・・・・!」 「あいつも昔、俺の大切なものを奪った。俺の父を殺し、国を滅ぼした」 「そんな話・・・・・・!」 「そうだな、お前には関係ない事だ。だが、お前が殺されかけた事を俺のせいにするのは違うと思うが、どうだ?」 「・・・・・・っ」 「あのな、ルーカス」  襟を握りしめる手を、そっと両手で包み込む。  どうか、俺の気持ちがルーカスに伝わるようにと。 「今お前が苦しんでいることに対して、俺は力になってやりたい。お前が望むなら、俺が側にいてやる」  今ルーカスにとって必要なものは、マースに替わる存在。  依存しきっていたあの男を忘れさせるのが、一番の薬のはずだ。 「時間がかかってもいい。お前が一人で歩けるまで、俺が手を引いてやる」 「・・・・・・敵のくせに」 「お前だって、屋敷で俺に血を飲ませてくれたじゃないか。だからおあいこだよ」
/103ページ

最初のコメントを投稿しよう!

170人が本棚に入れています
本棚に追加