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「俺の本質って何だ!? どうせ替えの利く人形同然の俺に、本質なんてあるわけねえだろ!」
「でも、こうして泣いたり怒ったりするのは、お前自信の感情だろ? 誰から作られたものでもない、紛れもないお前だけの持つ感情だよ」
俺達よりも色素の薄い赤目が、涙に塗れて輝く。
頬に伝っていく滴を拭ってやると、ルーカスは俺の襟を掴んだまま、ぶら下がるようにして座り込んだ。
「お前が、俺から全部奪ったんだ。 お前がいなければ、団長は俺を捨てなかった・・・・・・!」
「あいつも昔、俺の大切なものを奪った。俺の父を殺し、国を滅ぼした」
「そんな話・・・・・・!」
「そうだな、お前には関係ない事だ。だが、お前が殺されかけた事を俺のせいにするのは違うと思うが、どうだ?」
「・・・・・・っ」
「あのな、ルーカス」
襟を握りしめる手を、そっと両手で包み込む。
どうか、俺の気持ちがルーカスに伝わるようにと。
「今お前が苦しんでいることに対して、俺は力になってやりたい。お前が望むなら、俺が側にいてやる」
今ルーカスにとって必要なものは、マースに替わる存在。
依存しきっていたあの男を忘れさせるのが、一番の薬のはずだ。
「時間がかかってもいい。お前が一人で歩けるまで、俺が手を引いてやる」
「・・・・・・敵のくせに」
「お前だって、屋敷で俺に血を飲ませてくれたじゃないか。だからおあいこだよ」
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