第二章

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 そっと頭を撫でてやると、ルーカスの目からぼろりと大粒の涙が滴る。  じょじょに肩を大きく震わせ、しまいには顔をくしゃくしゃに歪ませて嗚咽を漏らした。  胸に押しつけられた頭を撫でてやる。  ようやく胸の支えが一つとれた気がし、俺は安堵する。  しばらくそうしていると、ルーカスは顔を拭いながら俺からいそいそと離れた。 「もういいのか?」  苦笑混じりに訊ねると、彼は耳を赤くして頷いた。 「大丈夫だ。ーーその、悪い」 「悪い? 何が?」 「服、汚しちまって・・・・・・」  ルーカスが顔を押しつけていたところは、確かに濡れて染みになっていた。  これぐらいで謝るな、と言おうとすると、 「殿下!」  展望車両の扉が開き、残してきたはずのイザークが闊歩していた。 「あれっ、個室にいないと国へ返すって言ったはずなんだけどーー」 「そんな冗談を言っている場合ではありません。協力者から、急ぎ殿下へ伝えなければならない情報を得ました」 「何?」  イザークは片耳に装着した小型軽量化された携帯電話を外し、俺に差し出す。  それを急いで受け取り、俺は右耳にはめ込んだ。 「俺だ、ライアンだ」 『おお、お懐かしいお声。お久しゅうございます、ライアン様』 「・・・・・・ムグリか?」 『ええ。ムグリにございます』  少し老いの感じさせる、高めでしわがれた男の声。  だが、教育係として側にいた師の声を、聞き違えることはなかった。
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