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こんな子供だましの変装でどこまでお忍び行動ができるか定かではないが、日がでているうちは仕方がない。
夜になるまで動かないのは時間の無駄だし、多少の危険を冒しても、進まなければ。
「夕食で会おう、ムグリ」
『ええ。お客人も先に着かれておりますから、お急ぎ下され』
「あいつか・・・・・・じゃ、丁重にもてなしておいて」
『承知いたしました。ーーそれと、最後にもう一つ』
「ん?」
『護衛がイザーク一人だと伺いましたのでな、知人をフィレンツェで待たせてあります。着きましたら、メディチ家礼拝堂へ向かわれなされ』
「メディチ家礼拝堂、か。分かった」
『ほっほっほ、ではまた後ほど』
穏やかな笑いを残し、ムグリとの電話は切れた。
俺がイザークへ携帯を返すと、ルーカスが怪訝そうに訊ねた。
「なんでフィレンツェからミラノへ行かず、コルトーナなんて田舎に行くんだ? 遠回りだろ」
「資金援助をしてくれる資産家と待ち合わせをしているから、ミラノへ行く前にその男と会う」
「ヴァンパイアに資金援助している奴が居るのか?」
驚くルーカスに、イザークが小馬鹿にしたように笑った。
「人間は全てが聖騎士団の味方というわけではないのです。中には資金を提供し、代わりに永遠の命を得たいという者もいるんですよ」
「信じられない・・・・・・」
珍しい話でもない。
現に、俺が国王として即位した後、俺へ挨拶に来ていた連中も、元人間の資産家や、これからヴァンパイアへ変わりたいと願う人間だったのだから。
「お喋りは後だ。マースもガルダ湖に向かっているとムグリが言っていたから、慎重に動くぞ」
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