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「エルヴィス、何すーーん!?」
驚く俺をよそに、舌先で舐め上げるように俺の唇をはむ。
赤面する俺を眺めながら、惜しむようにゆっくりと唇を離した。
「ーーライアンは王である前に、私の妻。その妻に軽々しく抱きつかないで欲しいものだな」
「ちょっと! 私の殿下に何するんですか! けだもの!」
「私の殿下、だと・・・・・・?」
鼻先がくっつきそうなほど至近距離でにらみ合う二人。
俺はお腹を撫でながら、さて部屋に戻ろうかときびすを返した。
だが、あわただしい足音が外から聞こえてきて、出入り口を振り返る。
それとほぼ同時に、屋敷の扉が大きく開き、デズモンドとカトリーヌが駆け込んできた。
顔色が悪く、少し息が上がっている。
二人は羽織っていた日除けのマントを脱ぎ捨てると、主であるエルヴィスの側に片膝を付いた。
「エルヴィス様、ただいま戻りました」
デズモンドが、ややかすれた声を発する。
疲弊した二人を見下ろし、エルヴィスは眉根を寄せた。
「大丈夫か、二人とも」
「ご心配には及びません。仰せの通り、昨晩戦闘があった場所の偵察をして参りました」
デズモンドはそう言うが、カトリーヌは床を見つめたまま、震えていた。
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