第一章

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「エルヴィス、何すーーん!?」  驚く俺をよそに、舌先で舐め上げるように俺の唇をはむ。  赤面する俺を眺めながら、惜しむようにゆっくりと唇を離した。 「ーーライアンは王である前に、私の妻。その妻に軽々しく抱きつかないで欲しいものだな」 「ちょっと! 私の殿下に何するんですか! けだもの!」 「私の殿下、だと・・・・・・?」  鼻先がくっつきそうなほど至近距離でにらみ合う二人。  俺はお腹を撫でながら、さて部屋に戻ろうかときびすを返した。  だが、あわただしい足音が外から聞こえてきて、出入り口を振り返る。  それとほぼ同時に、屋敷の扉が大きく開き、デズモンドとカトリーヌが駆け込んできた。  顔色が悪く、少し息が上がっている。  二人は羽織っていた日除けのマントを脱ぎ捨てると、主であるエルヴィスの側に片膝を付いた。 「エルヴィス様、ただいま戻りました」  デズモンドが、ややかすれた声を発する。  疲弊した二人を見下ろし、エルヴィスは眉根を寄せた。 「大丈夫か、二人とも」 「ご心配には及びません。仰せの通り、昨晩戦闘があった場所の偵察をして参りました」  デズモンドはそう言うが、カトリーヌは床を見つめたまま、震えていた。
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