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改札を抜け、駅構内から外へ出ると、視界いっぱいに鮮やかなオレンジが広がった。
イタリアと言えば、このオレンジの屋根に白い建物の風景が、まず頭に浮かぶ者も多いだろう。
俺の記憶にある、数百年前のフィレンツェの町とは少し違うが、人が賑やかに行き交う姿は、昔のままだった。
「日差しは弱まってきたが・・・・・・二人とも大丈夫か?」
俺とは違い、二人にとって日光は毒だ。
ルーカスはそれほどでもないようだが、イザークは少し辛そうに眉を寄せていた。
いつもならフードの着いた上着で、全身をすっぽりと覆って日除けをしているが、こんな町中でそのような格好をすれば、人目を引いてしまう。
イザークもそれを考えてか、サングラスと帽子しか着用していなかった。
だが、道行く人はイザークを振り返る。
「お前、目立ってるぞ」
うんざりした様子でそう言ったルーカスを睨み、イザークは唸った。
「私ではなく、あなたが目立っているのでしょう?」
・・・・・・いや、俺もイザークが原因だと思う。
帽子とサングラス、黒いトップスとズボンというラフな服装だが、なにせ彼の容姿は、男の俺から見ても整っていると思う。
俳優と言われても頷いてしまうほど、雰囲気があるのだ。
側を通り過ぎる女性は頬を赤らめ、男性は羨ましそうにイザークを見つめる。
俺とルーカスは影同然だ。
「いいなイザークは・・・・・・」
「えっ、なぜ落ち込んでおられるのですか? お加減でも悪いのですか?」
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