第二章

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 本人に自覚がないのが、よりいっそう俺とルーカスを落ち込ませるようだった。  ーーその時、駅前がざわついた。  打ち合わせていたかのように人並みが割れ、駅から外へ続く扇状に広がった階段の前に、一台の車が滑り込んできた。  車体も窓も全て黒一色だ。 「危ないな。人でもひいたらどうするつもりだ」 「いや、気にするのはそこじゃないぜ」  ルーカスに促されて車体をよく見ると、見覚えのある紋章が描かれていた。  聖騎士団の紋章だ。 「駐屯地は駅から離れているはず。なぜこのタイミングで?」  イザークが油断なく周囲を見回しつつ、訊ねる。  問いに答えてやりたいが、俺の意識はすでに別の所へ向いていた。  駅の中から出てきた、マースへ。 「あいつを迎えにきたんだ」 「まさか、同じ汽車に乗っていたのでしょうか」 「そうだとしたら、よくばれなかったもんだ」  もう、笑いしかこみ上げてこない。  こんな近くにマースがいたことにすら気づかなかった、自分のふがいなさに。 「急いでここを離れるぞ。見つかったら戦闘になりかねない」 「同意ですね。メディチ家礼拝堂へ行きましょう」  俺とイザークは揃って回れ右をしたが、ルーカスが動かない。  じっとマースのいる方角を、睨むように見つめている。 「ルーカス、行こう」 「なんで・・・・・・」 「ん?」 「なんで、俺が居るんだ?」  ぶるぶると震えた指で、ルーカスは駅の方を指さす。
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