第二章

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 まさかマースに同行してきたのかと呟くと、ルーカスが、 「あの人は、フィレンツェ駐屯基地の責任者だ。居て当たり前だろ」  と、律儀に答えてくれた。  彼の話によると、ダルスが駐屯基地に行く前日に、マースから紹介を受けたらしい。  その実力を買われ、第二の本部と言われるフィレンツェ駐屯基地の責任者を任されたそうだ。  建物の陰から様子を伺うと、ちょうどマースと青年が車に乗り込んでいた。  ダルスは、マース達の手荷物をトランクに詰め、助手席に乗ろうとした。  その時、ダルスの鼻がぴくりと動いた。  切れ長の碧眼が四方を巡りーー俺達を捉えた。 「まずいーー!」  ダルスは瞬時に動き、俺達に向かって疾走してくる。  さすが人狼。走る速度が常人と比べると尋常ではない。  ダルスの戦闘能力を実際目にしたことはないが、その名が知られるほどの男だ。  実力も計り知れない。 「逃げよう。ここで戦えば周囲に被害も出る」 「殿下、周囲の人間に洞察を掛けては? 我々に前に集めて、盾にすればーー」 「そんな事できるわけないだろ!」  人間をーーそれも、何の関わりもないこの人達を盾にしたくない。  それに、恐らくダルスは、人を盾にしたところで怯むような相手ではない。 「建物の上に飛べ! 屋根伝いにメディチ家礼拝堂へ行くぞ!」
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