第一章

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「カトリーヌ? 大丈夫か?」 「も、申し訳ありません、陛下」 「何かあったのか?」  普段冷静な印象が強いぶん、ここまで感情を露わにしている姿は珍しい。  ひとまず彼女を落ち着かせようと背中を撫でてやると、デズモンドが表情を曇らせた。 「・・・・・・昨晩の戦闘で、カトリーヌが初めて眷属にした者が殺されたのです」  ヴァンパイアは血を分けることで、眷属と絆を結ぶ。  自分の分身であり、可愛い我が子のような存在。何にも代え難い、一番の理解者だ。  その眷属が死ぬだけでも大変な悲しみだというのに、ましてや第一の眷属が殺されたとなれば、彼女の苦しみは俺では計れない程大きな物だろう。  俺が彼女の立場なら、イザークを失うと同じ事。  唯一の眷属であるイザークを失ったとき、俺はきっと怒りに支配されてしまうにちがいない。 「ーーデズモンド、彼女を休ませてやってくれ。地上での報告は、またあとで聞くから」 「仰せの通りに、陛下」  カトリーヌを連れて去っていくデズモンドを見送ると、俺はエルヴィスの顔を仰ぎ見た。  何か言おうと口を開くが、俺から発せられたのはうめき声だけだった。  毎日、仲間が大勢殺される。  中には見知った顔の者もいた。  彼らを守ると誓ったのに、俺は安全な場所で一人過ごすだけ。  子供のためにも、それが最善策だというのは分かってはいるが、俺の胸には漠然とした無力感が溜まりつつあった。
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