第二章

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「殿下、ほんの少しでかまいません。どうか血を頂けませんか?」 「それはできない。あれは副作用がーー」 「お願いします」  睨まれるように懇願され、俺は渋々頷いた。 「・・・・・・分かった」  俺は手のひらに爪を立て、薄く切る。  ぷっくりと赤い滴がわき上がる。  イザークの喉がごくりと鳴った。 「頂戴します」  青ざめた顔が手のひらに近づき、暖かい舌が傷を舐めた。  俺の血がイザークの口内に消える。  味わうように目を閉じたイザークの顔には、もう脂汗は浮いていなかった。  ゆっくり開かれた緋眼は、力強く輝きを増す。 「嗚呼・・・・・・久々ですね、この感覚」 「付け焼き刃だ。無理をするんじゃないぞ」 「承知しております」  今のイザークは、日光に組み敷かれてはいなかった。  夕空を堂々と仰ぎ、ほほえんでいる。 「では、参りますよ!」  嬉々としてダルスに向かっていく背中。  俺は銃をしまうと、ルーカスに手を差し出した。 「ほら、立て」  ぼんやりと座っていたルーカスは、俺の手を取るとゆっくり立ち上がり、訊ねた。 「・・・・・・あれは?」 「イザークの事か?」  ルーカスは静かに頷いた。 「急に元気になったな」 「あれは、言わばドーピングで一時的に身体能力もろもろが向上しているんだよ」
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