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「別に、嫌いって訳じゃない。苦手なんだ」
「一緒だよ。ーー別に、一人や二人嫌いな奴が居たっていいじゃないか。博愛主義より、よっぽど生き物らしいぜ」
「そりゃ、ご親切にどうも」
そう、別に嫌ってなんかいない。
子供の頃は遊んでもらったし、なにより母がレオナルドを心から信頼していた。
・・・・・・信頼していたからこそ、あの男が、城から出ていき、画家のまねごとを始めたのが許せない。
父が死に、俺が眠っていた期間も、姿を見せなかったような男だ。
「あんな奴・・・・・・」
「なあに? 俺のこと?」
レオナルドが、暴れるイザークを抱えて俺の横へ舞い降りた。
レザーのジャケットが所々破れているが、目立った傷はないようだ。
「姫様ほどじゃないが、あのワン公素早いな。こりゃ、汽車なんか乗ってる場合じゃねえぞ」
「じゃあどうやってムグリの所まで行くつもりだ。空でも飛ぶか?」
やけくそで言ったが、空を飛べるのは俺一人。
男三人を連れて飛べるわけがない。
だが、
「そうだな、飛ぶか」
レオナルドは至極真面目に頷いた。
俺たちが「何を言っているんだこいつは」という視線を向ける中、レオナルドの背中から、何かが生えてくる。
それは王族しか持ち得ないはずの、翼だ。
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