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「なんでお前が・・・・・・!?」
「質問は後だ。この金髪馬鹿は俺が連れていくから、遅れないように着いてこい」
黒々と輝く翼を大きく広げ、レオナルドが宙に浮く。
混乱する頭を無理矢理押さえ込み、俺もルーカスを抱えて飛び上がった。
みるみる小さくなっていくフィレンツェの町並み。
こちらを見上げる野次馬の中に、マースの姿も見えた。
人の視力ではおぼろげにしか見えない姿も、ヴァンパイアの目であれば、唇の動きすらよく見える。
"愛しています"
マースの唇が、そう言葉を紡いだ。
まるで呪いのように何度も俺へ向けられる。
彼の愛から逃げるように、俺はレオナルドの背中を追った。
***
「ーー嗚呼、ようこそお越しくださいました、陛下」
真夜中の訪問だというのに、ムグリは嬉しそうに目を細めた。
俺の記憶に在るとおり、しわだらけの顔をへにゃりと崩して笑う、老人だった。
「久しぶり、ムグリ」
「なんとも、ご立派なお姿。お母上の面影もおありで・・・・・・さあさ、どうぞ中でお休み下さい」
彼に招き入れられ、俺たちは暖かい室内へ足を踏み入れた。
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