170人が本棚に入れています
本棚に追加
/103ページ
木造で、天井から草の束が吊されている。
ハーブか何かだろう。
部屋の隅には薪が積まれている。
中央にはローテーブルとベンチのような椅子が向かい合うように置かれていた。
「どうぞ、お座り下さい。今お飲物をご用意いたします」
そう言って、ムグリは冷蔵庫を開けた。
中には輸血パックがみっちりと詰め込まれていた。
そこから五つ引っ張り出すと、マグカップに中身を注ぎ、俺たちの前に置いてくれた。
「さあ、どうぞ。ーーおや?」
ムグリは首を傾げ、瞳を輝かせた。
彼の視線の先にいるのは、イザークだ。
俺の血の効果が切れて、今は眠っている。
貧血のせいで顔は青白く、生気がなかった。
イザークを抱えていたレオナルドは、室内を闊歩すると、断りもなくベッド(恐らくムグリのものだろう)に彼を横たえた。
「のんきに寝やがって。おやっさん、後でこいつにも血を飲ませてやってくれ」
「イザークめ、なんともふがいない姿よの。陛下をお守りするべきものが、一人寝込むなど・・・・・・」
そうは言っているが、イザークを見るムグリの目は優しい。
そっと弟子の頭を撫でると、今度は俺の後ろで縮こまっているルーカスに、遠慮なく好奇の視線を向けた。
「ほっほう! ぬしがマースのアホから陛下に鞍替えしたという、不思議なヴァンパイアじゃな!?」
「俺はヴァンパイアじゃない」
「何をぬかすか。その目に気配、少し異物も混じっておるが、ヴァンパイアに違いない!」
俺でさえルーカスの招待には未だ疑問だらけだというのに、この老人はこうもはっきりと言い切ってしまう。
見た目では計り知れぬほど博識で、かつ少年のような好奇心にあふれた男だ。
最初のコメントを投稿しよう!