第二章

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「ムグリ、もうその辺にしてやってくれ」 「おやおや、これは失礼を。珍しい物を見るとつい・・・・・・」  マグカップから血をすすると、少し落ち着いたムグリは椅子へ腰掛けた。 「しかし、目立つのがお嫌いと聞く陛下が、空を飛んでいらっしゃるとは。驚きましたぞ」 「フィレンツェでダルス達に襲われたから、仕方なく。予定より到着が遅くなってしまった」 「かまいません。客人も、明日の朝訪ねてくる事ですし、今夜はお眠りなされ」 「ありがとう。でも、俺はまだやることがあるから、ルーカスに寝床を貸してやってくれるか?」 「承知いたしました」  ムグリの手招きで、ルーカスは緊張気味についていく。  一度俺の顔を見たが、そのまま奥の部屋に消えた。  これでようやく、"この男"と二人きりになれた。  俺の視線に気づき、暖炉の傍にたたずんでいたレオナルドは、顎で二階を指した。 「上で話そう」  彼の背を追い、きしむ階段を一歩ずつ登る。  上がりきると、扉も何もなく、屋根裏部屋に近い、天井の低い部屋に出た。  室内にはイーゼルが十数個置かれ、布のかぶったキャンバスや、描きかけと思われる絵画がたてかけられていた。  レオナルドは、質素なベッドに腰を下ろすと、近くにあった丸椅子を蹴って、俺に勧めた。 「悪いな。客をもてなせるような椅子は、あいにく持っていなくてね」
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