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「まず・・・・・・お前達の傍に居られなかった事を謝る。助けに行けなかった事も」
「行けなかった、じゃなくて、行かなかったの間違いだろ?」
「陛下」
ムグリが俺をじろりと睨む。
皮肉で返さず、きちんと話せと、鋭利に細められた目が物語っていた。
「・・・・・・母の願いだったというのは、どういう意味だ」
「言葉の通りさ。姫様は、自分が死んだらすぐに城を出て行けと、俺に命令していた」
「なぜ、そんな命令をお前に?」
幼い頃の記憶では、母の隣に必ず彼がいた。
影のように母の背後に寄り添い、下手をすると父王よりも親しげだった。
「母は、あなたを誰よりも信頼していた。それなのに・・・・・・」
「だからこそじゃ。王妃は、レオナルドを解放してやりたかったのじゃよ」
「解放?」
「自分ーー果てはヴァンパイアの世界からのう」
何か思い出しているのか、暖炉の火を見つめるムグリの顔は、優しげであり、哀愁が浮かんでいた。
「王妃は、レオナルドの本質を見抜いておった。戦いを嫌い、絵を愛するこの男を、このまま城に囲っていては気の毒だとな」
カップの血をすすって一息つくと、ムグリは深いため息をこぼした。
「当時、先代の王は人狼を配下に置こうと戦いを繰り返しておった。兵力増強と称して眷属を作り出しては、戦地に送った。ーー王妃は、自分という盾がなくなったとき、レオナルドも兵器同然に戦場へ送られるのではないかと案じたのじゃ」
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