第二章

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「どうしてそんな心配を・・・・・・」 「ーー王妃はご自分の死期を悟っておったのじゃ」  ムグリの、カップを握る手に力がこもるのが分かった。 「死期? だって、母は人狼に殺されたって・・・・・・」 「王妃は、理由は分からんが、治癒能力を失ったと言っておった」  まるで、子を身ごもっていた時の俺のようだ。  普段なら治る傷も、あの時は全く治らなかった。  だが、母が亡くなったとき、俺は既に生まれていた。  子を奪われた今の俺には、治癒能力が戻っている。  何か関係があるのだろうか・・・・・・。 「ムグリ、実は・・・・・・」  俺は子を身ごもった事、母と同じく治癒能力を失っていたことを二人に話した。  ムグリは喜んでいたが、レオナルドはエルヴィスへの怒りを露わにしていた(なぜかは分からないが)。 「なんと! 御子を身ごもっておられたとは! こりゃめでたい!」 「おやっさん、よくそんなのんきに喜んでいられるな」 「馬鹿者、これが喜ばすにおれるか!」  杖で床を乱打しながら、ムグリはにやにやと笑っている。  すでに子供の名前を考え始めている老人を放置し、レオナルドは俺に向き直った。 「今は、傷は治る体なんだな?」 「ああ。子供を授かる前と同じ体だ」 「そうか・・・・・・よかった」 「ーーなあ、なぜ母は、傷の治らない体で、人狼の集落なんか行ったんだ?」 「え・・・・・・」 「あの父が、傷の治らない母を戦場に出すとは思えない。何か、行かざるを得ない状況だったのか?」 「・・・・・・俺が、いたからだ」
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