第二章

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 去っていく背中を見上げ、何度も彼の名を呼んだ。  行かないでと啼泣(テイキュウ)した。 「たとえ出て行けと命令していたとしても、母上はきっと、お前に見送って欲しかったはずだ。たった一人の眷属に」  自分でも知らない間に涙が滲み、頬を伝って顎から滴った。  レオナルドが手を伸ばしてきたと思えば、ぎこちない手つきで頬を撫でられた。 「姫様は、俺の好きなように生きろと言って下さった。同時に、お前に何かあったときは頼むと」  レオナルドは画家としての地位、名誉を使って必死に情報を集めていたが、この三百年、俺は死んだと思っていたらしい。  あの消え去りようでは無理はない。  エルヴィスたちも、俺が死んだと思っていたのだから。 「お前が生きていたと分かって、俺はすぐにおやっさんと連絡を取った。ーー姫様の分もお前を守るために」 「俺を守るというなら、あなたの嫌いな戦場に行くことになるぞ?」 「分かったんだよ。大切な人を御失う恐怖に比べれば、戦場なんて少しも怖くない」  頭を軽く叩くように撫でられ、なんだか気恥ずかしくなった。 「別に、あなたに守ってもらうほど俺は弱くないし・・・・・・」 「だろうな。でも、お前を守るのは俺たちだけじゃない」  そう言うと、レオナルドは立ち上がった。  ふわりと空気が揺らぎ、彼の背中に一対の翼が広がる。 「この翼は、姫様が死ぬ間際、俺に譲ってくれたんだよ。自由と、お前を守るために使いなさい、とな」
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