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もはや脳内の情報処理が追いつかない。
王族のみが持つ翼を、眷属に譲る?
そんな話は聞いたことがない。
切り落として接着するわけでもあるまいし、一体母は何者なのだろう。
なぜそのような奇想天外な事を思いつくのか、俺には理解できなかった。
痛む頭を押さえ、レオナルドの背に寄り添う翼にそっと手を伸ばした。
手触りは、俺の翼と何ら変わりない。
破けた服の隙間から見える翼の根本は、綺麗に皮膚内に収まっていた。
本当に、レオナルドと一体化している。
物珍しく、夢中になって観察していると、レオナルドは翼をしまい込んだ。
「どうやって翼をくれたのかは、正直俺も分からなかった。ただ、この翼のおかげで今日までずいぶん助けられたんだ」
「母上が、あなたを守っていたという事だな」
「そう、なのかな。不思議と孤独を感じなかった」
自分の生きていた世界を捨て、人間と偽って生きてきた彼には、この翼が母そのものだったのだろう。
母も、翼を渡すことで眷属に寄り添っているように見えた。
「・・・・・・レオナルド」
「なんだ?」
「あなたがヴァンパイアの世界を捨てたことは事実だ。仲間からの非難も免れない」
「そうだな」
「それでもかまわないと言うなら、その・・・・・・どうか俺たちに力を貸してくれないか?」
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