第二章

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「それでは、私はこれで失礼致します。隣の部屋に控えておりますので、何かあればお呼び下さい」 「分かった、ありがとう」  何度目かの深いお辞儀をして、ダルスは後ろへ下がろうとしたが、 「ダルス」  頬杖をついたマースが、わずかに表情を厳しくして訊ねてきた。 「あの方の傍に、エルヴィスはいたかい?」 「いいえ、いませんでした。私も一緒に居るものと思い、警戒していたのですが・・・・・・」 「あいつがいない?」  何か訝しむように、マースは眉根を寄せた。 「いつも殿下にくっついていたのに、なぜだろう」 「もしや別行動をしているのでは?」 「それはない。仮に別行動をしているなら、殿下を守るために、あいつは派手に暴れ回って注意を引こうとするはずだ」 「確かに・・・・・・奴はご息子の騎士(ナイト)、でしたね」 「ああ。本当に面倒な奴だよ」  マースが深いため息をつくと、彼の腰掛けていたソファの後ろから、"新しい"ルーカスが顔を覗かせた。 「団長、お話終わりました?」 「おや、すまないね、ルーカス。もう終わるよ」  ルーカスの頭を撫でるマース姿は、子を可愛がる父にしか見えない。  気持ちよさそうに頭を撫でられていたルーカスは、シャツのボタンを一つはずし、胸元をはだけさせた。 「そろそろご飯の時間でしょ? いつでもいいですよ」 「もうそんな時間か。ーーじゃ、後は頼んだよダルス」  マースの目は、すでにルーカスへーー正確には、ルーカスの首筋に向いていた。  もう自分を見ていない。  静かに退室しようとしたが、不意にルーカスが艶めいた声を漏らした為、マースの方へ視線を向けてしまった。
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