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父王ですら、母には怒鳴れない。
心底惚れ込んでいた。
母がどれほど大がかりないたずらをしようと、いつも「仕方のない奴だな」と笑っていた。
それほどまでに愛していた母が永眠した日から、父は冷淡になってしまった。
光そのものだった母が消え、父の世界は真っ暗になってしまったことだろう。
仲睦まじく寄り添っていた両親の姿を思い出すと、どうしようもなくエルヴィスに会いたくてたまらなくなる。
彼は今どうなっているのだろう。
石化が止まっていてくれたらーーいや、石化が解けてくれたらどれほど嬉しいことか。
「エルヴィス・・・・・・」
つい愛しい人の名が唇から漏れ、俺は慌てて口元を手で隠した。
横目でレオナルドの様子を伺うと、彼は不機嫌そうに唇を尖らせていた。
「そういえば、あの馬鹿はどうした? 昔からお前にひっつき虫だったのに」
「彼は・・・・・・」
今一番俺を苦しめている、愛する人を苛む謎の事象。
言葉に使えながらも話そうとすると、もう一つのベッドからうめき声が聞こえた。
「う・・・・・・」
「イザーク!」
「殿下・・・・・・?」
薄目で俺を見つめ、イザークはふわりと微笑んだ。
上体を起こそうとする彼に近寄り、背中を支えた。
「体は大丈夫か?」
「はい。ご心配をおかけして申し訳ありません」
「気にするな」
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