Spring(has come)前編

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「それと制服はちゃんと着ろ。校門前チェック、三回連続で引っかかったな」 「あれは違うってば。遅刻ギリだから、教室ついてからネクタイ結ぼうとしたのに」 「余裕を持って登校しろ、ネクタイは結んでこい、色付きのインナーも禁止だ、バカ!」 三拍子揃わせて吐き捨てるように、蒼は言った。 「寝ぼけててさ。その辺にあった服を適当に掴んだら、よりによって黄色だったんだよ。俺も困ってんの」 すべて本当のことだったが、几帳面と神経質、おまけに潔癖を絵に書いたような蒼からすれば理解しがたい言い訳の数々に聞こえたらしい。眉間の皺はより一層深くなって、凪の漆黒とは正反対に色素の薄い瞳は氷点下まで冷え込んだ。 「でもほら、今日はちゃんとネクタイしてるよ」 取り繕うように言って、凪は自分の胸元を指さす。群青色と緑色のストライプ模様のそれを見て、蒼は静かに顔をしかめた。 「ゆるいし、だらしない」 「他のやつらも大体こんな感じじゃん」 「第一ボタンを外すな、結び目も大きすぎる。下手くそっ」 「ひどいな、俺だって不器用なの気にしてんのに」     
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