10 現実逃避

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そして、事が起こったのは、連休を目前にした金曜日の昼頃。 整理しきれない気持ちがパンク寸前まで達し、 それは、ずっと振り回され続けた私の体の悲鳴となって現れた。 実際、この時の私は、 いったい自分が、いま何をしているのかも分からない程、ぼんやりとしていた。 そして、何を思い付いたのか。 不意に自席を立ち上がり、溜息をついたところまでは憶えている。 だが、それと同時に目の前がにわかに暗くなり、物音が遠くなったように思えた。 そして、 「豊田さん!」 どこか遠くから、誰かが私を呼んでいる。 しかも、一人ではなく何人もの声。 「おい、大丈夫か」 「誰か、毛布持ってきて」 なんか、自分の上の方で飛び交う声が段々と近くなり、 それに伴い視界も開けてきた。 あれ? なんだ、これ? それで気付いてみると、課長も福澤も他の同僚たちの顔も みんな私を上から覗き込んでいる。 その慌てぶりで、ようやく私にも状況が掴めてきた。
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