10 現実逃避

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10 現実逃避

生まれて初めて「落ちた」恋は、想像以上にハードだった。 実際、ほんの些細な事で激しく揺れる心はもちろん、 それに振り回されて、頭の中も混乱したまま。 そして、こんな精神状態が、 いつの間にか、私の体に大きくダメージを負わせていたようだ。 だがこの時の私は、そんな自分の事にも気付かないほど 激しい渦に呑み込まれていた。 「おはよう」 あれから、一夜。 翌朝、出勤した時には、先輩らしく福澤から声を掛けてくれた。 だから、 「おはようございます」 一応、私なりに平静を装い、いつも通りに挨拶を返す。 しかし、やはり昨夜の今日だ。 さすがに私も福澤も、ぎこちなさは否めない。
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