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そんな空気を、フォローするつもりだろう。
ほどなく席を立った福澤が、そっと私のデスクにメモを置いて行く。
『昨日は、間が悪くなってごめんね。
それに、返事も急いでないから。むしろ、ゆっくり考えてみて。
でも仕事は、今まで通りにお互い頑張ろう。』
彼らしい気遣いだな、と思った。
そして、ゆっくり視線を上げると、
向こうの方で照れ臭そうに微笑む彼と視線が合う。
だから私も、小さく口元を綻ばせ頷き返した。
確かに、細やかな彼の気遣いのお陰で、
胸の中で硬く強張っていた何かが、ほんの少し和んだ。
だが、それも束の間。
立ち上がるパソコン画面を眺める私は、知らず知らずに細く吐息を零す。
実は昨夜も、帰宅してからというもの
日付が変わっても、しばらく寝付くことができなかった。
もちろんその理由に、初めてされた福澤からの告白が絡んでいないわけではない。
だが、やはり一番気になっていたのは、先輩が、あの後どうなったのか。
しかも先輩の誤解は、まだ解けていないままだ。
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