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9 シュラシュラ・ばあ(続き)
「ごめん、マイカ。今日は、キャンセルで」
「はい。こちらこそ、すみません」
少し早口で言葉を交わし、先輩は、彼女の腕を掴み駅の方へ。
私は、福澤を促して反対方向へと歩きだす。
だが私は、どうしようもなく、ひどく混乱していた。
もちろん、福澤へ何をどう説明するか必死に考えるが、
言葉なんか何も浮かんでこない。
そして、
「豊田さん」
呼ばれると共に、少し強く腕を掴まれた。
それに驚いた拍子に勢いよく彼を振り返ると、少しバツが悪そうに謝られた。
「驚かせて、ごめん。でも、この辺でいいんじゃないかな」
言われて気付くと、既に私たちは、待ち合わせスペースの端まで来ている。
そして、視線を戻した福澤の顔には、ひどく強張ったものが浮かんでいた。
「あのさ、今の彼って、例の先輩だよね?」
私は、小さく頷いた。
「それで、彼と付き合うっていうのは、本当?」
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