ひろいもの無用

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「下ろしてよ、慈雨。寝ている暇なんかないんだから」  伽羅子がすかさずおにぎりを拾い、慈雨の目配せで背中に隠す。 「何を云っているんです。風邪はひき始めが肝心だと、『家庭の医学』に書いてありましたよ」 「そうよ、若旦那。いよいよ本格的に故障したらどうするの。私、若旦那の元じゃないと、働きたかないのよ」  口無しも耳を垂らしてさゆやを見上げる。 「駄目だよ、督促に行かなくちゃ。御隠居が時を端折(はしょ)ったからね。約束の三ヶ月、期限はもう目の前だもの」 「御隠居ったら、どうして時間を縮めたりするのよ」  伽羅子に責められ、御隠居は参ったねと、領(うなじ)に手をやった。 「そうしろと云ったのは、お前たちじゃないか」  慈雨の腕の中で、さゆやは足をばたつかせる。やむを得ず慈雨はさゆやを床に下ろした。 「あのモノを質流れにさせる訳にはいかないんだ。伽羅子、口無し、行くよ」  出ていこうとするさゆやを、「待ちなさい、阿さゆ」御隠居が静かに引き止める。 「外は雨が降っている。私の大事な傘を貸してあげよう」

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