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マナー的には、かなり不作法であっただろう私の姿にも関わらず、先生は何も言わずに、私の前にお茶とお菓子を置いてから、目の前に座った。
先生は、座ると側に置いてあった灰皿とライターを引き寄せ、緑色のマルボロの箱を手に取り、煙草を一本取りだし、ちらりと私を見てきた。
「吸っていいか?」
「あっ……どうぞ」
私がそういうと、先生は、ライターで煙草に火をつけると、深く煙を吸い口から煙を吐きだし、燻らせた。先生の周りに、半透明の煙がゆらゆらと揺れる。
私は、そんな先生の姿を、正座をして、改めてじっと見つめていた。
大きな長い指で煙草をはさみ、気だるげに煙草を吸う。ただ、それだけなのに妙に絵になる美男子だ。
そんな、静かな時間がしばらく続いた後、先生は灰皿に煙草の灰を落してから、私を見た。
「で、話って?」
「あっ、は、はい……あの」
「……お茶どうぞ」
「あっ、はい。ありがとうございます……」
上手く言葉を紡げない私を見かねてか、お茶を進められて、私は素直に目の前のお茶を一口口に含んだ。
熱すぎない温度と煎茶の良い香りに、お茶を喉に流し込んだ時には、大分落ち着きを取り戻していた。
そんな、私をじっと見ていた先生は、2本目の煙草に火をつけてから言った。
「で? 話って?」
「あっ、はい……弊社で、現在ある映画の撮影をしておりまして……その映画のタイトルを宮戸先生に付けてほしいんです」
「タイトルを付ける?」
「はい、先生が考えたタイトルを、先生の書で書いてほしいんです」
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