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「今回の作品……タイトルを書道家に付けてもらおうか」
映画の撮影がクランクインされた頃。
スタッフ全員が集められた場で、その新進気鋭の監督がぽつりと、そうつぶやいた。
「あの監督。確か作品のタイトルは脚本家がつけたものがちゃんとあったと思いますが?」
「そうなんだけどねー……オレの作ろうとしている作品に合わない気がする。かといって、オレ自身もいいタイトルが思いつかないんだよねー」
20代前半のその監督は、まだ幼さが残る顔で歯を見せて笑いながらそう言い放った。
今回の作品は、社長の昔の友人であった著名な脚本家が若い頃に書いた作品で、お蔵入りしていた描き下ろしの作品を監督がリメイクしたものだった。
そんな監督の突然の発言に、困惑したスタッフの一人が言った。
「なら、脚本家の書いたとおりのタイトルでよろしいのでは?」
「んーでもねー……あのタイトルだと、観客が見ようとは思わいと思うんだよね。有名な原作がある訳じゃんないしさ」
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