1 依頼

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意外かもしれないが、映画にとってタイトルとはかなり重要な要素になる。 というのも、現在は、小説や漫画が原作の映画が多い中、そういった原作がなく映画で初めて、その作品を発表する際に、世間一般の人々はタイトルを見て、内容を想像して、初めてその映画に興味を持ってくれるからだ。  といっても、観客が映画を見ようと思う要素には、有名監督の作品だとか、あの俳優が出演するからという要因も強い部分もある。  しかし、そういう要因を取り除いた場合、同じ内容の映画でも、タイトルのイメージによって客足に差は出てくるのである。  その傾向は、外国映画だとわかり易く、タイトルの翻訳しだいで、映画が売れるかどうか決定される。 かの有名な、光る剣で戦っているSF作品がそうだったように。人間も、映画も第一印象が肝心なのである。  さらに、名前と共に、タイトルデザインも重要となってくる。 「そこでさ! オレにいい考えがあるんだけど」 監督はそう言うと、興奮するように立ち上がって社員全員を見ながら言った。 「今回はタイトル未定のままで制作しよう! でさ、この作品って青年書家の話でしょ? 題字も筆字で書きたいしさ、その書いてもらう書道家の人に映画見てもらって書いてもらうついでに、タイトルも付けてもらうってのは、どお? 面白そうじゃない!」 監督の楽しそうな声に、一瞬、社員全員が沈黙した。 もともと突拍子もないことを言い出す事で有名な青年ではあったのだが、まさか、こんなことを言うとは誰も思わなかった。  しかし、社長がその考えに面白いと言いだし、あっさりとその案は通ってしまったのだ。
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