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ライダーはその場から動かず、森山の席から四つ後ろ、通路を挟んだ左の席のそばにいる。 申谷は最前列から彼らを見上げる。 銃に両手を添えたまま、張りつめているものに神経を尖らせる。 組んだ足を通路に出して、森山はほがらかな口調で言った。 「小日向さんの居場所が知りたいんだろう?」 返事を待たずに言葉を続けていく。 「数週間前まで、あの人は東北の地方都市に滞在していた」 そして、肘置きに頬杖をついて静かに笑った。 「いまはどこにいるのかわからない」 「どういうことだ」 申谷は眉間をひそめて厳しい口調で投げつけた。 相手は、本心を包み隠すような薄ら笑いを貼りつけている。 「連絡がつかなくなった。むしろ逆に訊ねるが、いったいこれはどういう意味だと思う?」 胸が絞られていくようだった。 掠れた声で、かろうじて呟く。 「まさか、死んだのか?」 しかし、森山は「うーん」と首を傾けた。笑みは消え、受け取った言葉を精査するように目を閉じている。 「どうだろう。私もそう考えたが可能性は低い。彼になにかあれば連絡が来るように、複数の回線を用意してあるが、どこからもそんな情報は入っていない。まぁ、みんな仲良く死んでいたらわからないけれど」 そう言って、ゆっくりと目を開けた森山は、口の端を静かに持ち上げた。 「要は捨てられたのさ。私は小日向さんに」
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