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墨染め桜とは、淡紅色の桜の花弁が燻んだ白に変わった桜の事で古来より人の悲しみを受けると墨染め桜に変化すると言われていたがそれはあくまでも言い伝えてあり実際に桜が墨染め桜に変わる事はなかった。
しかし、現実に桜の木は何の前振りも無しに墨染め桜へと変わり人の命を奪っている。
命を奪うと墨染め桜は普通の桜へと戻り色を取り戻す。
墨染め桜の怪は、優雅に花見を楽しみたい平安京の人々を不安に陥れていた。
陰陽師としては優秀な翡翠は普段は単独行動任務だ。
それは、独自の術を隠したがる陰陽師特有の考え方から来ていた。
だが、今回検非違使との合同調査に加えられた翡翠は、機嫌が悪かった。
翡翠は検非違使が嫌いだ。
何故なら、陰陽道がまやかしだと考える輩が多く、陰陽師を卑下する者が大半だからだ。
その上、連絡伝達に時間が掛かる。
陰陽師同士なら式で連絡を取り合うが、一般人は式が使えない為に言付けを頼むか、当人を探して要件を告げなければならない。
翡翠は、無理矢理組まされた検非違使の相棒を探そうと式を懐から出した。しかし、煩わしく思いまた懐へ戻す。
そして、現場へと行く為に式符を袂から取り出すと念を込めた。式を呼び出すと、それに乗りふわりと上昇した。
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