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「平城京…か…最近は更に荒廃し、廃墟となりつつある。しかも、まだ姫の行方も分からぬままだ」 平安京に霊障が少ないのは、平城京を中心に霊障が集まってるのも関係していた。 荒れた地には妖が出現しやすい、それ故に平城京は妖が集まる場所となっていた。 「彼の地に、人がまだ住んでいるのが不思議だ」 平城京の悪霊を退治する為に、一族でその地に住む陰陽師達を思い、翡翠は顔をしかめた。 翡翠は、先程の報告の為に式を飛ばそうとして検非違使には式での伝達が出来ないのを思い出し、渋々検非違使庁へ戻り新たな被害者の報告をする事にした。 報告後、早々に平城京へ向かおうとした翡翠に上司が待ったをかけた。 検非違使の相棒を連れて行く事に成ったのだ。 目的地に早く到着するのを優先し、その検非違使を式に乗せ空を飛んできたのだが、翡翠は既に後悔していた。 初めて式に乗り、空を飛んだ、相棒の検非違使、藤原典保は上機嫌で話し続けていたからだ。 「いゃ、式とは便利ですね。ほら、西の建築物が良く見える」 人懐こい典保は、不機嫌な翡翠など構わずに、遠くを指差し話続けた。 「ああ、もう都があんなに遠くに。空を飛ぶという事が、こんなにも愉快とは。翡翠殿が羨ましい」 道中もだが、平城京に降り立ってからも、典保は興味津々でずっと翡翠に話し続ける。 「しかし、荒廃は噂以上ですね…あっ、それは式の一種の人型ですか」 大貴族の子息で、現場になど出た事が無い典保と相棒に組まされた翡翠は、陰陽師仲間から貧乏くじを引いたと言われていた。翡翠が懐から出した紙を珍しそうに典保は見つめ、手を伸ばしかける。それを、さり気なくかわし翡翠は小声で呟いた。 「…確かに貧乏くじだ。くそっ」
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