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妖を警戒し人型を飛ばす翡翠の横で典保は、興味津々といった感で式符の人型に手を伸ばす。
「典保殿、触らないで下さい。もう少しすれば状況が分かりますので」
霊障が強く出ているこの地を平然と歩き回る典保に翡翠の苛立ちが積もり手が微かに震える。
人型が探索から戻り報告してはまた探索に飛んで行く。その情報を元にこの付近には人の住む気配が無いと翡翠は確信し典保に声を掛けた。
「典保殿、この付近には誰も…くそっ、居ないどこへ行った。これだから貴族のお坊ちゃまは…」
わなわなと肩を震わせると翡翠は、仕方なく典保捜索の為の人型を飛ばした。
翡翠達が降り立ったのは平城京の中心部から少し外れた場所だった。
「くそっ、やはり典保殿を連れて来るのではなかった」
人型に典保探しを命じた翡翠はギリっと奥歯を噛み締めた。
「何かあったら藤原の大殿から叱りを受けるのはこっちなんだぞ。あのお坊っちゃまは…」
妖対策として真昼に訪れたのだが、妖の気配より霊障が濃くそれは中心部へ向かうほど強くなっているようだった。
その時、翡翠の掌に一枚の花弁が舞い落ちた。
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