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型取りは、堂々とこたろうの素足に触れるまたとない機会だった。前日から興奮が抑えられなかったたま子は、椅子に座らせたこたろうの前に跪くと、必要以上にねっとりとした仕草でズボンの裾をめくり、靴下を脱がせて、たらいに張った湯でふくらはぎの上まで丹念に洗った。 足の裏や指の間を触られたこたろうは、くすぐったがって逃げようとした。その反応に被虐心をそそられたたま子は、足首をつかんで執拗に撫でまわした。可能なら指ではなく舌を這わせたいくらいだった。 こたろうからしたら、とんだ災難だ。笑い過ぎて涙が出た。それで容赦する気になるほど、たま子の欲望は浅くない。もっと泣かせたいとさえ思った。 一緒に来て別の部屋で待っていた吉乃は、幼馴染の二人が他愛なくふざけているのだと思って、食べかけのせんべいを噴きながら笑った。 「もしおまえがファミリーに決まったら、おまえにも作ってやるよ」 ごまかし半分、本音半分で言う。吉乃はきっと、そのときも膝丈のスカートで来るだろう。白く細い足の裏をちょっとくすぐってやれば、軽やかな笑い声を上げて足をばたつかせるに違いない――。 「ありがとー」 たま子の妄想など知らず、吉乃は真剣に感激した様子で礼を言った。 「うん、あたし、ファミリーに行きたい。がんばる。おねえちゃん、約束ね」 少女はきらきらした瞳で、慕うように身を寄せてきた。たま子は反射的に肩を抱き寄せた。触らせてくれるんなら遠慮なく触る。それがモットーだ。     
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