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ペット探してます
腹を空かせながら道を歩いていた無職のエス氏は、電柱に貼られていた紙を二度見してから立ち止まった。
『ペット探してます』と書かれているが犬か猫かも分からない。下には電話番号が記されている。
「こっちから電話してペットが何かを聞けというのか?」エス氏はムッとしながらも素早くポケットから携帯を取り出して電話をかけることにした。電話番号の下に「報奨金を差し上げます」と書かれていたからだった。
まともに張り紙も作れないボケ老人の飼っていたペットが逃げ出したのかもしれない。それならば適当に動物を見つけてきて「これですよ」と言って強引に渡せば、納得して報奨金を笑顔で渡してくれる可能性もある。
「もしもし、張り紙を見たのですが」エス氏はいつもより1オクターブ上げた。
「あ、ペットの件ですね」相手は中年の女性っぽい声色だった。
「そうです。探してるペットのことをもう少し詳しく知りたいのですが」
「電話じゃアレなので、お会いしませんか?」
「・・・・・・いいですけど」無職のエス氏は1秒ほど戸惑ったが、時間だけは腐るほどあることを2秒後には思い出し、相手の提案を受け入れた。
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