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むう、と私はうなった。
若い兵士は大勢いるが、王女が顔を知っているほどのものとなれば、若くてもそれなりの地位にいるはず、そうなるとかなり限られてくるのだ。
自分と同等の立場か、すくなくとも中隊長あたりではないかと検討を付けたのだが……。
結局、私が口にしたものの中に、姫の知っている人物はほとんどいないようだった。かといって他に思い当たるようなものもおらず、最後に私は、半ば冗談半分に自分の名前を口にしてみた。
十ほども年上の、姫から見たら若いとは決して言えないこの私が、よもや彼女の恋愛対象になるなどとは、毛ほどにも思ってはいなかった。
ところが、それがなんと、まさかの大あたりだったのだ。
自分に敬称をつけて呼ぶのは、なんとも面映ゆくばかばかしかったが、頬をそめてうつむく姫君の初々しさを目の当たりにすると、いまさら本当のことなど、とても言えそうになかった。
それに、もしも真実を知ったら、彼女は二度と私と口をきいてくれないかもしれない。
なぜだかそれは自分にとって、ひどくつらいことに感じた。
だから今、こうして素直に胸の内を語ってくれる可憐な王女のために、私はこのままチョコレートの精になりきろうと固く誓った。
私たちの秘密のティータイムは、それからはじまったのだ。
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