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「……転校かぁ」
ずっ、と鼻をすすって呟いた声は小さく、覚悟を決めたはずの胸に不安と心配が浸透していくのが分かる。
大丈夫と自己暗示をかけてみても、1度広がったものを止めるのは難しくて。
「でも、行かないと」
遊と、約束をしたんだから。
たとえ夢の中の出来事でも、遊の願いを裏切るなんてこと、俺に出来るわけない。
鼻をかんでベッドを下りて。
今日から始まる新しい生活に、することは沢山ある。
まだ不安は拭えないし、出来るなら転校なんて取り消したいと思ってしまうほどだけど。
「……遊、」
遊に会うためなら、なんでもする。
この転校だって自分で決めたことじゃないか。
ぱちんっと両頬を手のひらで挟み込んで気合を入れた俺は、決意も新たに部屋を後にした。
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