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「あら。誰かと思えば。今をときめく麗香さんじゃないですか」
収録の為に訪れたテレビ局の廊下で、いきなり背後から声を掛けられ振り向けば、そこには、今の自分へと変わるキッカケとなった、かつてのライバル、白雪がいた。
彼女はあれ以来、テレビドラマやCМには殆ど出ず、舞台の方で活躍していると噂では聞いていた。
そのせいか、ぶりっこ特有の話し方は消え、妙に大人っぽい雰囲気に変わっていた。
メディアへの露出が少なくなったせいか、世間からの知名度は明らかに自分の方が上。
今の麗香にとって、白雪は過去の人であり、恐るるに足らず。
「白雪さん。ご無沙汰ですわね。相変わらずお綺麗で」
落ち着いた態度で、にっこりと微笑みながら応えると、白雪は麗香の頭のてっぺんからつま先まで値踏みするような視線を投げつけた後、いやらしく口端を上げた。
「それにしても……。テレビで拝見していなかったら、ここにいる麗香さんが、あの【美輪 麗香】さんだとは、思いもしなかったわぁ~」
「ふふふ。そうでしょう?」
白雪の言葉を、どんどん若返り、更には、その姿かたちさへ変え、誰もが認める完璧な美女となった自分への褒め言葉だと受け止めた麗香は、満足気に微笑んだ。
するといきなり「アーーーーーハッハッハッハッハッハッハ!」と、たった今、自分に対し、感嘆の言葉を発した筈の彼女は、打って変わって、馬鹿にしたかのように高笑いした。
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