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「だって、あなた。生まれた時から勝ち組なんですもの。私のように苦労をし、骨を折ってきた人であったのなら、私も尊敬し、憧れたでしょうよ。でも、【美輪 麗香】という人間は、知れば知るほど、ただ持って生まれた美貌と、恵まれた環境。それだけで周りから贔屓され、目上の人間から引き上げられて来ただけ。そんな人間に、コンプレックスをバネに頑張って来た私が負ける訳にはいかないわ」
そこまで言うと、白雪は麗香の手首を掴んだ。
「ちょっと。何をするの?」
突然の事に麗香が慌てると、彼女は人差し指を口に当てた。
「シッ。廊下でこれ以上騒ぎを大きくしたくないでしょう?」
辺りを見渡せば、二人の言い合い……いや、ほぼ、白雪の独白に近いのだが、それでも、険悪な雰囲気に何事かと、ギャラリーが遠巻きに集まってきていた。
「ちょっと来て」
引っ張られるままに白雪の後をついていくと、そこは彼女の楽屋。
バタンと扉を閉めると、彼女は麗香にソファーに座るよう促した。
「さて、と。麗香さん。私が以前、あなたを挑発した時の事、覚えてる?」
白雪が言っているのは、自分がプチ整形を初めてするに至ったキッカケでもある、あの控室での事であろう。
麗香は頷いた。
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