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「あれ。今の麗香さんになるように仕向けたの」
クックックと喉を鳴らしながら、おかしそうに話す白雪に、苛立ちを覚えた。
不快さを露わにした麗香は、「は?」と、低い声を発した。
「天然美人と、手を加えた私。清純派に相応しい生き方をしてきた人間と、後ろ暗い過去を持つ私。どちらに価値があると思う? 勿論。若さで言えば、私でしょうけど、それでも、業界内では、そろそろ、【美輪 麗香】を本格的な演技派女優に転換させようとする動きも出て来ていたの。しかも、私は逆に、デビュー前の写真を公開し、整形バラドル的な位置付けにさせられようとしていたわ」
当時の事を思い出しているのであろう。
憎々しげに語る彼女に対し、同情しつつも、それ以上に、あの時、自分の知らない所で、そんな動きがあった事の方が驚きでもあり、そして、自分が過ちを冒してしまった事に薄ら気が付いてしまった。
「それで?」
震える声で、続きを促す。
「まだ分らないの? あの時。あなた、自分の後を追う若き女優ってだけで、私に脅威に感じていたでしょう? それを上手く利用したって訳。勿論、あんなもんじゃ、プライドの高いあなたの事だから、ヒアルロン酸注射くらいしか、しないだろうと思って……。フフフ。あなたみたいな挫折知らずのお嬢様なんかには分らないかもしれないけれど。この業界って。頭と体を使えば、色んな事が出来ちゃうの」
「一体……どういう……」
「ほら。あんなにも老化に対して過敏になっていたあなたは、少し若返っただけで、いきなり、周りからもてはやされたり、ドラマの主役が回ってきたりして、やっぱり、自分の持つ美貌こそが、この業界で生き残る為に必要なんだって勘違いしちゃったでしょう?」
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