鏡よ、鏡

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 ガチャリ。  ドアノブを捻り、楽屋から出る前に彼女はこういった。 「美輪 麗香さん。あなたの顔……前はどんなんでしたっけ?」  最後に発した言葉を、まるで楽屋の中に閉じ込めるかのように、扉を閉めて出て行った。  一人残された麗香は、耳に反響する白雪の言葉をブツブツと唱えると、備付のドレッサーの前に立った。  大きく息を吸い込み、静かに目を閉じる。 「鏡よ、鏡。世界で一番美しいのはだぁれ?」  ドキドキと早まる鼓動を感じながら、ゆっくりと瞼を開けていく。  薄らと。  徐々に目の前が明るくなっていく。  目の前の鏡に、自分が映し出されているのが、ぼんやりと分かる。  心の中で、再度唱える。 《鏡よ、鏡。世界で一番美しいのは……》  唱えている途中で、瞼は完全に開いてしまった。  そして、鏡に映っていた者は…… 「い、いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」 そこには、【美輪 麗香】の姿はなく、全てが歪な、とても人間とは思えない【何か】が映っていた。
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