鏡よ、鏡

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「あぁ、もう。目元に小皺が……。もっと保湿性のあるアイクリームをつけなくちゃ」  鏡の前で念入りに肌とメイクのチェックを欠かさない彼女の名は、美輪 麗香。 彼女は十数年前、全国美少女コンテストで優勝して以来、国民的正統派美人女優として、その名を轟かせている。  そんな彼女も、重ねていく年には勝てず。  毎日、数十回は鏡を見ては溜息をつく。 「やだっ! 少し顔の弛みが出て来た? こんなんじゃ今度の主演。白雪さんに取られちゃう」  白雪とは、麗香と同じ事務所に所属する売り出し中の若手女優。  艶やかな黒髪に、サクランボのようにみずみずしい唇。  透き通るような白い肌に、チークをしなくてもうっすら桃色に色づく頬。  パッチリ二重に長い睫毛ときては、文句の付けどころがない。  麗香も、白雪と同じ年頃の時には彼女と同じくらい。  いや、もっと弾けるような。  それでいて煌めくような美しさを持っていたのだが……  過去の栄光に縋るかのように当時の写真を見ていると、背後で扉を叩く音がした。 「はぁ~い」  余所行きの声を出して返事をすると、ゆっくりと扉が開かれた。  鏡越しに誰が来たのかを確認すると、顔を覗かせたのは、まぎれもなく噂の白雪本人。  突然のライバルの登場に、思わず顔を強張らせる。
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