鏡よ、鏡

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「どうかした?」 “何か気に喰わない事でも言ったかしら?”と思い、声を掛けると、彼女は「ハッ」と我に返った。  不機嫌そうな。  それでいて思い詰めたような顔を見せていた白雪だったが、一瞬で気持ちを切り替え、嘘っぽい笑顔を貼り付けながら、麗香の耳元に口を近づけた。 「でも……。やっぱり、化粧品やエステだけじゃ、小皺やお顔の弛み。限界がありますよ?」  小馬鹿にするように、息を吹きかけながら小さく囁くと、鋭い眼差しを麗香に向けた。 「この業界で、同じようなタイプの女優……いりませんから」  相手が大先輩であるにも関わらず、無礼な態度で冷たく言い捨てると、さっさと楽屋から出て行った。  後に残された麗香の頭の中に木霊するのは、最後に白雪が言い放った言葉。  確かに、似たような系統の人間なんて、この業界に何人もいらない。  しかし、デビュー当時から、【第二の美輪 麗香】と謳われる白雪は、そのイメージを壊さぬよう、雰囲気も演技も、自分そっくりに真似している。  もし二人のうち、どちらかをヒロインに選ぶとしたら、若く、美しい方がいいに決まっている。  それじゃぁ、自分に出来る事は?  あの女よりも美しくなるには?  誰もが認める、昔の自分の美しさに戻るには?  自分の女優人生を思えば思う程、彼女の存在を脅威に感じ、焦ってしまう。  冷静な判断が出来ないまま、自分が業界に期待されているのは一体何だろうと、自分自身に問えば、導き出される答えは一つ。
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