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元々、国民的美少女コンテストで優勝して、この業界に入ったのだから、当然、誰もが振り向く『美貌』こそが自分の武器。
『美しい美輪 麗香』だからこそ商品価値があるのだと勝手に決めつけ、グルグルといらない事を考えてしまう。
備付のドレッサーに座り、項垂れながら、両手を握りしめ額に当てる。
ゆっくり目を閉じ、息を整え、呪文のように唱えた。
「鏡よ鏡……。この世で一番美しい者はだぁれ?」
恐る恐る瞼を開けて、顔を上げる。
鏡に映った自分を見て、絶句する。
そこには電気の加減か、やけに法令線が目立ち、目の下にクマが出来ているような、かなり老けた印象の自分の姿が映っていたのだ。
「い、い、い、いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
廊下の奥まで届くほどの甲高い悲鳴の後で、けたたましい音を立ててガラスが割れるような音が辺りに響き渡った。
複数の足音が慌ただしく楽屋に向かって近付いて来る。
ノックもなしで、乱暴に開けられる扉。
「麗香さん! 大丈夫ですか?」
あまりに大きな音だったので、慌ててマネージャーや関係者達が駆け付けてきてくれたものの、室内の惨状に彼らは皆、大きく目を見開き言葉を失った。
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