鏡よ、鏡

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 けれど、それも束の間のこと。  麗香の体に怪我がないかを心配し、すぐさま駆け寄る。  麗香はというと、手元にあった化粧品を投げつけたせいで、派手な音をたてて砕け散った鏡の破片が飛び散っている中、細かくひび割れた鏡に映る自分の姿をジッと見つめていた。  それはまるで蜘蛛の巣に捉えられた獲物が、もがき苦しんでいるかのようで、そこから目が離せず、しばらく呆然と立ち尽くしていた。  その一件があってからというもの、彼女の『美』に対する執着は異常な程強まり、化粧品やエステだけでなく、今まで頑なに拒んでいた、美容整形にまで手を伸ばしてしまった。 「美輪さま。本当にいつもお綺麗で。本日はどのような?」  セレブや芸能人御用達の、隠れ家的なクリニックに足を運ぶようになって、早1年。  最初は、肌のハリを取り戻し、目の下のクマをなくす為に、ヒアルロン酸注射やレディエッセ注入をする程度だったものが、その効果たるや歴然。  ふっくらとした頬に、ハードスケジュールによる長年の睡眠不足から、くっきりついたクマが薄くなり、目元がスッキリ明るくなれば、心も軽やかになる。  不思議なもので、小さなキッカケや些細な変化が自分に自信を与えてくれ、自然と表情も柔らかくなり、堂々とした立ち振る舞いが出来るようになる。  そうなれば、周りの評価や見方まで変わってくる訳で――
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