鏡よ、鏡

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『白雪が出て来てからは、麗香は終わったな』 『徐々に焦燥感漂うようになってきた麗香と、まだまだ伸びしろのある溌剌とした白雪とでは、そりゃあ白雪を推すだろう』 『落ち目の麗香に、うなぎ上りの白雪』  業界内外で、そう噂されていたのだが、若々しさを取り戻しただけでなく、デビュー当時を彷彿させるような、輝きに満ち溢れた表情と雰囲気を身に纏う麗香に対し、皆が『美輪 麗香復活』を感じずにはいられなくなった。  その事は、スタッフや共演者の大袈裟とも言えるお世辞や態度だけでなく、大物プロデューサーの、「麗香ちゃん。いいねぇ~。変わったよ、変わった! やっぱ、こう……オーラが他の子とは違うよ。よし! 今度の連ドラのヒロインは麗香ちゃんに決まりだね」といった、発言からも窺えた。  お陰で、ここ最近の人気の衰えや陰口、そして、焦りが一気に跳ねのけられ、また、一躍、時の人となった喜びで一杯になっただけでなく、過去の栄光であった頃を彷彿させた。  その反面、プチ整形をして若返った事で、自分を取り巻く空気や環境が変わったと思い込んだ彼女は、更に欲深くなっていく。 『美しくなれば、更に自分は注目される』 『もっともっと、誰よりも。誰にも負けないくらいに綺麗になれば、一生この地位を明け渡さずにすむ……』  一度歪んでしまった価値観は、中々修正出来るものではない。
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