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モーゼは宴会のために寿司を用意していた。プラスティックの蓋に、見切り品のシールが付いてはいるが、円盤状の大皿を三つ購入していた。
「さぁ、食え」と、モーゼが進めるなり、ユウタは両手で掴んで、口いっぱいに寿司を詰め込んだ。
「……うまい」
もごもごと唸りながら、貪るユウタの姿を、「そんな食い意地を張るな。好きなだけ食えばいいんだから」と、モーゼは目を細めて笑っていた。
モーゼは日雇いの肉体労働をしていた。働くのは気まぐれだったが、富裕層の街へ通い、彼等がよりよい生活を送るための建物や道路を造る手伝いをしているのだと、以前ユウタに告げた。檻の中の住人には、モーゼのように富裕層の住む街で働く者が多いという。ここではない他の檻の中がどうなっているのかは、外を出歩いたことがないユウタは知らなかった。ここの檻の連中は、ほぼ60歳を過ぎた老人で、若者はモーゼとユウタの二人だけだった。
最年少のユウタは3月で11歳になった。子供のユウタが出来ることといったら、富裕層街のゴミ拾いくらいだ。毎週日曜日の午前中、街の決められた場所を徘徊してゴミを拾う。集めたゴミ袋を回収する際に、お駄賃として100円が貰える。
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