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「井戸があってさ」
私の言葉に、
「はあ? 井戸? なんの話?」
と友人は怪訝そうな顔をした。
「うん、井戸」
「……待って、それ、ホラーか何かなの?
今、書いてるって小説?」
嫌そうな顔になる友人に、私はちょっとネジが外れたように笑う。
「ふふふ。小説の内容じゃなくてさ」
「じゃあ、何の話なの? 突然」
「昔、あったじゃん、怖い映画が」
「あー、あったね。それで?」
「井戸からさ、出てくるの」
「……井戸からだった?」
「違った? 井戸からじゃなかったっけ?」
「え? あの最後のシーンでしょ? テレビからだよ?」
「そうだったっけ? どっちでもいいや」
「何なの、あんた」
「重要なのはさ。それを見た人が感染するってことだよ」
「え? 死ぬんじゃなくて?」
その言葉に、私は首を振る。
「ダメだよ、死んじゃ。読めないじゃん」
「私、あんたの話がぜんっぜん読めないわ」
「感染してもらわなきゃいけないんだよ」
「何に?!」
「私の小説を読みたくなる病、に!!」
「は?」
私は夢見るように遠くを見る。
「皆んな、私の小説を読みたくなるの。
それがどんどん感染して……。
ああ~読者いっぱい……」
「あのさ、酔ってるとこ悪いけど、どうやって感染させるの? 井戸掘るの?」
「え?」
そこまで考えてなかった。
「……」
「……」
「ダメじゃんそれ」
友人の心無い言葉に、私はガックリと肩を落とす。
「そだね。無理かあ……」
いつになったら読者数増えるかなあ……。
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