17人が本棚に入れています
本棚に追加
開かずの扉を前に
ひび割れ薄汚れた窓ガラス、木造造りの外観は
腐り朽ち果て酷いものだ。
住民の意見で残しているのであれば、
もう少し建築保存良くしておくべき筈。
そんな配慮もない、つまりは
囁かれている噂は事実なのではないかとそう思わせる。
旧校舎の昇降口、皆を引き連れ進んだ、千明の行動に
部長としてのプライドが傷ついたのか、
千明の伸ばす手を払いのける様に祐介は扉に手をかける。
「いいか、皆?」
懐中電灯のスイッチを入れ、滑りの悪い引き戸を開ける。
肝試しぐらいしか旧校舎に足を踏み入れない事を考えれば、鼻に付くカビ臭さや体、
髪にまとわり付く埃は当然だろう。
「もう、最悪…」
ヘアースタイル、メイクをバッチリほどこして来た加奈は不快そうに呟く。
連なる下駄箱、未だに何足か古びた上履きが残っている。
下駄箱を過ぎ曲がった先には職員室。
下駄箱から真っ直ぐ目の前に伸びる廊下の左右には学年ごとの教室、
そして音楽室、理科室、図書室と続き、一番奥には問題の物置がある。
「一応、私が先導するわね、いいでしょ? 部長?」
下駄箱で各教室を指しながら説明してくれたが開かずの扉の存在を知るのは
千明ただ一人、部長としての立場上、仕切りたがる
祐介だがそこは「ああ、頼む」と千明の提案をのんだ。
最初のコメントを投稿しよう!