ベイビーズドントクライ

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 民たる男性たちはぬいぐるみであり、摂食も睡眠も生殖もない。ぬいぐるみの種類が違うため姿もばらばらで排斥というものがなく、みんな仲良しこよしなんだ。争いがないゆえに統治の必要がない。  夢のような世界だけど問題はひとつだけある。  それが【悪夢】とよばれる怪物だ。姿はさまざまで、〈獄〉という犬型や〈厭〉という猿型に〈怨〉という蜥蜴型が確認されている。【悪夢】は男性たちを襲い、殺してしまう。【悪夢】には刃も銃弾も効かず、ただ〈希望〉のみが対抗する手段だった。祈りや望みを創作活動に込めて、作品をかたちにすると、そこからエネルギーを吸収してぬいぐるみは変態できるんだ。  どのように変わるかはぬいぐるみによってさまざまで、攻撃手段も多岐に渡る。超一流画家でハリネズミのぬいぐるみである末神エガク(すえがみ〃)さまの変態は、自身が虹色に輝いて半径五百メートルに渡って針の雨を降らせるというものだった。 【悪夢】は一体ずつしか現れないのでやりすぎもいいとこだけどね。  現代の男性のほとんどはタグに創作階級を記されているんだ。生まれながらに三流の称号を持ち、創作を宿命としている。円の内側で暮らすものにとって【悪夢】に対抗することは死活問題であった。
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