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朝霧の中で夜空が紅く染まり出す頃…
誠一郎と希美は手を繋いで愛し合っていた…
開かれた心の扉の奥底にある輝きを…形を…色を…香りを…奏でる音を…感触を…味わいを…それらひとつひとつを確認するかのように身体を重ね合わせていた。
それは光のように透明で波のように押し寄せる…
「私は…こんなに幸せで良いのだろうか…こんなにも…」
誠一郎は…突然、押さえられない感情がない交ぜとなって…
熱いものは涙となってボロボロと零れ落ちた…
ひたすらに… ひたむきに…
それは希美の双丘をしとどに濡らす…
「どうしたのですか…」
希美は誠一郎を不思議そうに見上げた。
「こわいんだ…こんなに心が満たされて充たされていくのを感じている…」
誠一郎の顔が涙でくしゃくしゃになる。
「愛することが、こんなに辛いだなんて…」
鼻をつたい落ちる涙は溶けた氷柱のように見えた。
「知らなければ幸せだったのかと問われたら違うと答えるだろう…」
穏やかな優しい瞳で彼は見つめていた。
「失いたくはない…もうあなた無しで生きていけない身体になりました…」
繋がれたままの心と身体が脈を打つ。
「永遠に続く愛なんて無いと思っていました…
そんなものはおとぎ話だと高を括って………」
誠一郎は潤んだ瞳で希美を見つめていた。
「今なら信じられますか…」
その言葉と同時に希美はキスをした。
ああ、そうだ、求めていたのだろう…
魂の対となる存在を…
とけていく
ほどけていく
ひとつになる
新しい扉の向こう側に…
まぶしいくらいの幸せがあった。
「愛してます」
希美の吐息が、甘く耳の奥を痺れさせていた。
永遠であって欲しい、ふたりでいこう…
何度も何度でも…
あの楽園を訪れよう。
「愛しているよ」
愛の雷が、ふたりの肉体を揺さぶる。
心が重なっていく、心臓のリズムが新しい音楽を奏でていく。
幸せという光が、影も、また大きくしていくことに気付いてはいなかった。
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